―刀の鞘を持つ女―

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健太の母親は健太を引きずりながら、女を自分の家まで案内した。 その途中の道程で、健太の母親は村の案内や自分達の事について、いろいろ話した。 健太の母親の名前は早苗(さな)。 そして健太はどうやら村主の跡取りらしく、次期村主として、礼儀作法や学問を習っているらしい。 が、当の本人は――。 「礼儀なんざ挨拶が出来りゃあなんぼのもんだし、学問なんざ金の数かぞえが出来りゃあ充分さ」 などと、まったくやる気のない様子。 これには早苗も頭をかかえていた。 健太の家に着き、女は感心したように呟いた。 「へぇ、流石村主様の家だねぇぃ。旅人一人家に泊めるには充分な大きさじゃないかい」 「これでも村一つ預かってますからね」 早苗は家の大門をくぐり、女を招いた。 大門をくぐると其処には広い庭があった。 まさに日本庭園と言ったところか。 木や花がバランス良く植えられていて、池まであった。 池では鯉が数匹、気持ち良さそうに泳いでいた。 「ほ~・・・いや凄いとしか言えないねぇ」 女は大門から玄関までの道程を、景色を楽しむようにゆったりとした足取りで歩いていった。 「さあどうぞ。此方に」  
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