―刀の鞘を持つ女―

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早苗(さな)に案内され、既に開けられていた玄関に、女は「お邪魔するよ」と言いながら入った。 中には二人の女中が迎えていた。 健太は先に入ったのか、廊下の奥に姿を消した。 その事を女は早苗に問うと、早苗は「逃げたんですよ」と苦笑混じりに答えた。 「お部屋の方は・・・」 と早苗が案内しかけたところで、女は、 「ああ、出来れば外に直ぐ出れる所が良いんだけどねぇぃ」 と希望をした。 「構いませんが、どういったことで?」 早苗は迎えていた女中に自分の持っていた荷物を渡しながら聞いた。 「いやねぇ、夜風にあたるのが好きでねぇ」 その女の答えに、早苗は納得したように、笑みを浮かべた。 「では此方に」 早苗は女中に任せることなく、自身で女を部屋に案内した。 やがて目的の部屋に着いた。 「彼処に曲がり角がございましょう?あの角を曲がっていった所に裏口がございますので」 早苗は指を指しながら説明をした。 女はフンフンと頷き、 「我が侭を言って悪かったねぇ」 と感謝の意を込めて謝罪した。 早苗は「構いませんよ」と笑顔で返した。 と早苗は思い出したように、 「あっ、ところでお名前は・・・?」  
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