【 夢幻郷 】

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 この地球は滅びようとしていた。  何千年ともいう間の愚かな人間同士の競い合い。  奪い合い。  憎しみ合い。  人々は他人を思いやる心を忘れて、ただ己が為の欲望と本能のままの亡者になった。  殺戮。  破壊。  そんな言葉で片付けられるほど、この事態は軽くはないだろう。  いつから人は悲しむ心を忘れたのだろう。  いつから人は慈しむ想いを消してしまったのだろう。  いつから人は感謝の気持ちを閉じ込めたのだろう。  それはもう遠い記憶。  この地球では、そんな問い掛けさえ意味を持たなくなった。  
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