第一章

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そう声をあげた男が詠唱を始めた。 『火よ、燃え盛る炎となりて敵を焼き尽くせ』 男がそう唱える、すると男の前に火球が三つ出来上がった。 『ファイアーボルト!』 男が叫ぶと火球が時間差でレイスに飛んで行く。 ―キィィ― 低い音を立ててレイスに火球が迫る、が…レイスは慌てもしなければ驚きもしなかった。 レイスは冷静に剣を横にし、それを思い切り振る。 ―パァァン― 風船が割れるような音を出して火球が三つとも欠き消えた。 同時に、男達のすぐ近くに居たはずのレイスが消え、男達の間を風が通り抜けた。 「…ぇ?」 火球を放った男が間抜けな声をあげる。 「ボルト程度で殺られてたら命がいくつあっても足りない」 真後ろから声がして男が振り向くとレイスが剣を首の近くに向けて立っていた。 男が声も出せずに驚いていると、目の前を何かが通り抜ける。 男が目だけ動かし横を見た。 レイスも驚いて通り抜けた先を見る。 そこには、氷柱が壁に深々と刺さっているのが見えた。 レイスが男達を見る 男達は恐怖したのか顔が強張っていた。 いきなりロイが近づいてきて言う。 「あんたら…戦場じゃなくて良かったな」 ロイが男達を見てニヤリと笑った。 「戦場なら…戦闘中行方不明でかたがつく」 男が意味を理解すると「ヒッ」と短く情けない声をあげた。 ロイが言っているのは、戦場なら敵に殺された事にしてに俺達に殺されていると…そう言う事だ。 「レイス…剣を引いておけ」 ロイは笑っている、が目は真剣だとレイスは思い、剣を鞘に収める。
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