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……散りばめられた蒼が乾き、月が星を数えるよりもまえ、少女は一人で空を見ている。
場所は薄暗い森の中、時折鳥の影が少女をつつみ、少女はそのたび眼で鳥を追う。
聡明さが伺える顔立ちと慈悲に満ちた大きな瞳はあたかも世の真理を見据えているかのようで、雰囲気だけを見ると少女はすでに少女ではなかった。
それは老けではなく、年相応の幼さは持っているのだが、不意に見せる表情一つで年齢を感じさせない愁いを見せる。
彼女の名は西園寺静香。
静香は今年で十二になった。
政治家の父と医者の母という良血を受け継ぎ、名家と呼ばれる家に付いてくる周囲の過度な期待は例外なく静香にも向けられたが、静香はその期待を裏切ることなく非凡で華麗な少女へと育っていく。
そんな静香に両親は深い愛情を注ぎ、静香自身もそれを当たり前と思うことなく、感謝の気持ちを忘れたことがない。
――静香の人生はまさに順風満帆といった風であった。
だが、そんな静香の人生はある日を境に変化し、運命とすればあまりに無慈悲な現実を突きつけることとなる。
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