vimokSa編/序幕

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 ――西園寺事件。  それは静香の父であり、現役の国会議員である西園寺秀雄が出先からの帰り道に交通事故で死亡した事から始まった。  事故の原因は相手の居眠り運転とされたが、加害者の言い分には不明瞭な点が多く、警察がそれらを問いただせば供述を二転三転と変える始末。  更には父を失ったという現実を静香がまだ受け入れられないでいた翌朝、居間で西園寺静璃の死体が発見された。  ……第一発見者は彼女、西園寺静香であり、彼女には最早流す涙すらなくなっていたのか、ただ茫然と、動かなくなった母の姿を見ていたという。  ――西園寺静璃の死は医師により自殺と断定された。  夫の死で自棄になっての衝動的な自殺ではないかとされ、相次いだ悲報に残された親族の悲しみは言うまでもない。  だが悲しむよりもまず静香という未来ある才女を誰が育てていくかを先決として話し合わねばならないのではないかと主張する親族が現れた。  議員秀雄と医者静璃、どちらも成功者と認められる地位を築いており、その成功者二人の遺産は途方もない金額である。  名門の血筋と言えど不況の影が見え隠れする現代では手に入る金は手に入れるべしとして、一部親族が静香を養女とするべく動き始めていたのだ。 .
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