第2話 バイク好きにろくな奴はいない

9/10
前へ
/78ページ
次へ
  『バイクを壊されて苦労する気持ちだけは知ってるからよ』 それより早く金額を教えろと、付け足し欠伸をする。 一瞬唖然とするが、次に我に返って笑い出す男。 「ククッ……こりゃあ傑作。気に入ったよアンタ、特別に金額は半分にしてやるよ」 懐から紙切れとペンを出し金額を書いてレイに渡す。 受け取ったレイは金額に目を通すと、ポシェットを漁りながら男に言った。 『アンタ、名前は?』 「はぁ?一体それが--」 『いいから教えなさい』 有無を言わさない言葉に疑問を覚えながらも渋々口を開く。 「………ケビン……………ケビン・ヲォッカ」 『ヲォッカ………あぁ、バイク製造大手会社の社長』 「なんで知ってる……って、おい!」 サラリとレイの言った言葉に目を見開く男だが、レイはそれをスルーして書いていた一枚の小切手を渡す。 男は仕方なく小切手に視線を移し、その瞳は驚愕に包まれる。 「レイ…ン……まさかっ!」 急いで顔を上げるとソコには既に、レイの姿はなかった。 残ったのは燃え尽きそうなバイクの亡骸と眼帯を着けた1人の男だけ。 「ハッ……命拾いしたのは俺の方ってか…………」 もう一度、渡された小切手に視線を落とし笑みを零す。 「本当、面白い奴だ………」 請求先と金額の隅に書いてあるメッセージはこうだ。 《請求先は私の上司よ。一応私の名前も書いたけど 私もバイク好きなの、だからアンタの常連になってあげるわ》  
/78ページ

最初のコメントを投稿しよう!

52人が本棚に入れています
本棚に追加