白銀の剣銃士最終章  ―誰がための鐘が鳴る―

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「ふふ、あの子のああいう表情を見るのは初めてですね。よほどあの歌姫ちゃんに思い入れがあるのでしょうか」 「そうだな……このところ兄ぃはいつも仏頂面だった」 ルリは執事から勧められたカクテルを片手に照れ笑いするフェイトを眺めている。 コアもルリも普段なら考えられないような貴族姿であり、豪華な髪留めで髪を束ねており、艶やかになっていて、心も非常に落ち着いていた。 ……と、見せかけつつコアだけは無表情の裏で複雑な心境を渦巻かせているのだが。 「あの子があんなふうに女の子と接する日が来るなんて思ってもいませんでしたから少し寂しい気もしますね」 「……そうだな」 「そういえばあなたとあの子はどう言った関係なのですか? あなた自身のことは聞きましたがそれをまだ聞いていませんでしたね」 「特筆すべきでもない、ただの兄と妹の関係だ……」 「そうですか……」 ティアとフェイトのやりとりから目をそらし、胸を後ろから鷲掴もうとしてきたツヴァイを後方回し蹴りで吹っ飛ばし、ワイングラスを口に付ける。 「ちょっ……なんや元気ないから元気出させたろー思うただけやん……」 「そうだな、殺気という名の元気は出た。よし、そろそろいい加減殺してやる。そこを動くな、狐」 「いやいや、自分も一応けが人やっとりますねんけど……痛い! ひっ、ヒールで指を踏むなっ、足の指を踏まんとってェ!」
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