白銀の剣銃士最終章  ―誰がための鐘が鳴る―

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フェイトは珍しく引きつった笑みを浮かべ、怒りに満ちたランスの父とランスを止めようとする。 「わかった……わかったごめんなさい! 謝るから! ハイ謝罪~」 「こんのガキャア! ナメてんのかぶっ殺してやるァァァアッ」 素直に謝ることに途中で耐えきれなくなったフェイトがよけいに父を煽ってしまった。一方のランスはフェイトがこういう場面で素直に謝れるわけがないと知っているので……。 「父上……もうよいではありませんか。コイツはあとで私が何とかしておくので……」 「ランスロット……小さい頃のお前はそれはそれは可愛かった……」 「なんだおっさん。思い出話か。歳だな。おいツヴァイ、一緒に聞いてやろうぜ」 「ほなお邪魔しますぅ~」 「黙って聞いてろや小僧ォッ」 正座しているフェイトの隣にツヴァイが三角座りで収まり、ついてきたアゼルがフェイトの膝にちょんと座る。 「なにかと我が武勇伝についてうやうやしく聞いてきては目を輝かせておった……だがどうだ9年と6カ月21日3時間46分前ッ。この小汚い小僧を結婚相手だと連れてきた……」 「えらい細かいなぁ……」 「いや、それだけショックだったらしいぜ。あんときの悲劇は思い出したくもねェ。ガキながらに胃袋に腸が巻き付きそうになったからな」 フェイトとツヴァイは二人仲良く拝聴しつつ小声で会話、アゼルはなにが愉快なのかにこにこと微笑みながら体をフェイトに預けている。 「その時の事を思い出したらなァ……思い出し……ぅう……ウォォォォッ! メイドォッ、何でもいいからこの小僧を殺せるモン持ってこいィイッ!!」 「あなた……なにを騒いでるのですか。騒々しい」 「うお」 怒りが頂点に達した父上様の襟を乱暴につかみ、引き寄せ拳銃の銃身をごりごりと口内へねじ込んだ人物……夫に対抗できる唯一の良心。 「母上……銃はお止めください」 「あらランスロット、いいの? このままだとフゥ君死んじゃうわ」 壮絶なことをしながらにこりと微笑んだのは……ギルティナ家の統率役にして容姿も性格も一級品の母上様だった。
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