白銀の剣銃士最終章  ―誰がための鐘が鳴る―

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「さてあなた。もうそろそろ怒りを静めてくれないと、引き金が弾丸を放つまであと3ミリもありませんよ」 「ほふぇっ」 「母上! 引き金を引かないでくださいッ!」 「あらあらだってこうでもしないとお分かりにならないでしょう? 一体自分が今、誰を葬ろうとしているのか。戦場の癒しマスコットに手を出すのは許されないのよ~」 満面の笑みを浮かべながらそう言った母上。戦場の癒しマスコットと揶揄された男は……。 「おわぁ……やっぱ一番おっかねェのはランスのママさんか……」 「お前を癒しマスコットと称するあたりなぁ……あの人現役将校やろ?」 「俺がガキの頃、うちの傭兵部隊が雇われてここの軍と合同で任務に就いた時にえらい可愛がられたからな」 「殺伐とした戦場に戸惑いながらも一生懸命にがんばる男の子萌え~」 頬に手を当てうっとりとそう言う母上は父上の口から銃身を抜き、台尻で脳天を打ち抜きメイドに銃を渡す。 「大きくなったわね~フゥ君。元気にしてた~?」 「ゼイルさん……あなたは変わりないようで」 「ああん、呼び捨てでいいのよフゥくぅん。他人行儀は止めましょぉ?」 「いや……他人でいさせて下さい」 「えぇ~、もうそんな可愛くないこと言わないで~」 話しかけられたら話しかけられたで縮こまるフェイト。 それも仕方ない。このギルティナ家で一番恐れられているのが母、ゼイルシュタッド=シオ=ギルティナなのだから。 王国陸軍第一課将校、彼女の一声で後ろに数万もの腕の立つ兵隊が揃うとも言われている。 ランスが鬼の支部長ならばゼイルは鬼神。ランスの起源がここにある。
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