白銀の剣銃士最終章  ―誰がための鐘が鳴る―

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奪還作戦前もコアはぶっ倒れるまで飲んでいたため、自分の飲酒限界は全くわかっていないはずである。 しかも先程からかなりの量を飲んでいるためもうろれつも回っていない様子……このままだと面倒なことになると踏んだフェイトは酒を取り上げようとしたが……。 「ん、やっ」 「いや、ヤじゃねェの」 「これは兄ぃにも渡さない……」 「ぶっ倒れてもしらねェぞ」 取り上げようとするフェイトの手からグラスを死守しようとするコアだがふらついていて危なっかしい。深追いすると落としそうなので取り上げることはあきらめた。 フェイトがあきらめたとみるや、コアはやけにくっついて隣に寄る。 「で、兄ぃ?」 「なんだよ」 「旅の連れとゆーのはちゅぅしてもいい関係なのか?」 「人それぞれだろ?」 「いけないだろ普通」 コアはえらく語彙を強めた。 「いけないのか。初めて知った」 「旅の連れということはその……あれ。恋人ではないということら。恋人じゃあないのにちゅぅはおかしい……でも」 「でも?」 「妹とでぃーぷちゅぅはゆるされるぞ」 「待て。余計な文字のせいでだめな感じになってる」 赤ら顔で迫ってくるコア。 それに対し、フェイトはコアの後頭部に手を回し、グッと自分の胸へコアを寄せ、抱きしめてやった。 「っとに、甘えたいなら言えよ……」 ふいにコアの持ったグラスが鼻先まで寄せられた時、グラスの中身がただのジュースだということに気づいた。 コアは酔ったふりをしていたらしい……甘えたかったが気恥ずかしかったのだろうとフェイトは勝手に憶測するが……。 「兄ぃはコアにキスしてくれないのか……? あの灰色の女にはしたのに……」 「いや……そういうことはだな」 「コアだって……兄ぃの事好きなんだぞ……」 「ああ、分かってる」 「分かってない……」
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