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「折角、圭一郎様からの贈り物なのに~」
「……オヤジ、からだと?」
綾は扉を少し開け、その隙間から覗き見る。ただ違うのは、チェーンロックをかけている所。しかし訪問者と目を合わせることなく、再度施錠する。その間、0.1秒。
「要らん。やっぱり帰れ。」
「あ~け~て~……っていうか、何でそんなに……」
「お前が持ってきたからだ、郵便屋A。」
物言う綾の言葉には、何の冗談も含まれていなかった。
それを聞いた郵便屋Aなる訪問者はショックを受けたようで、まるで雷を受けたように固まり、そして扉の前でいじけてしまったらしい。
「……いいんだ、いいんだ。どうせ僕なんか……僕なんか……」
「……わかったよ。開けりゃいいんだろ?全く……」
観念(と、言うより呆れた)綾は開錠して扉を開けた。
そこには、満面の笑みを浮かべた、灰色の帽子とツナギを着た配達員(らしき)人物がいた。
扉越しで見えなかったとはいえ、ショックを受けていた輩がこうも早く立ち直っていた。
「こんにちは~、お荷物お届けに参りました~、お受け取りに印鑑かサインをお願いしま~す!」
「……お前、さっきまで落ち込んでいたのに、随時と立ち直りが早いな。」
「それはもう!綾さんへの愛のパワーで復活……!」
――――バタン!!
速攻で施錠。今度は0.09秒。
もちろん世界新記録。(何の?)
そしてこの一言。
「やっぱり帰れ。」
「綾さぁ~ん!」
語尾にハートが付きそうな会話にウンザリな綾。
さっさと帰れと切に願ったのは言うまでもない。
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