001 夏が始まりを告げる頃に

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「折角、圭一郎様からの贈り物なのに~」 「……オヤジ、からだと?」 綾は扉を少し開け、その隙間から覗き見る。ただ違うのは、チェーンロックをかけている所。しかし訪問者と目を合わせることなく、再度施錠する。その間、0.1秒。 「要らん。やっぱり帰れ。」 「あ~け~て~……っていうか、何でそんなに……」 「お前が持ってきたからだ、郵便屋A。」 物言う綾の言葉には、何の冗談も含まれていなかった。 それを聞いた郵便屋Aなる訪問者はショックを受けたようで、まるで雷を受けたように固まり、そして扉の前でいじけてしまったらしい。 「……いいんだ、いいんだ。どうせ僕なんか……僕なんか……」 「……わかったよ。開けりゃいいんだろ?全く……」 観念(と、言うより呆れた)綾は開錠して扉を開けた。 そこには、満面の笑みを浮かべた、灰色の帽子とツナギを着た配達員(らしき)人物がいた。 扉越しで見えなかったとはいえ、ショックを受けていた輩がこうも早く立ち直っていた。 「こんにちは~、お荷物お届けに参りました~、お受け取りに印鑑かサインをお願いしま~す!」 「……お前、さっきまで落ち込んでいたのに、随時と立ち直りが早いな。」 「それはもう!綾さんへの愛のパワーで復活……!」 ――――バタン!! 速攻で施錠。今度は0.09秒。 もちろん世界新記録。(何の?) そしてこの一言。 「やっぱり帰れ。」 「綾さぁ~ん!」 語尾にハートが付きそうな会話にウンザリな綾。 さっさと帰れと切に願ったのは言うまでもない。
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