001 夏が始まりを告げる頃に

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オーバーリアクション気味な郵便屋Aを嫌々眺めつつ、綾はとある事を郵便屋Aに訪ねる。 「……で、オヤジは何と?」 「お誕生日おめでとう、と。」 「……俺の誕生日は、4月9日だ。時期外れにも程が有るぞ。」 「ええ~!?」 などと、片や馬鹿な話を呆れつつ観念した様子で進める綾と、片や意気揚々な郵便屋A。 「あと『これ宜しく。誕生日プレゼントだ。』との事です。」 と、差し出されたのは、ここに来た当初から持っていた大きな箱。 とりあえず、呆れつつ綾は正規の手続き通りに印鑑を押す。 「毎度どうも~。」 扉が閉まると、やっと帰ったか、と言葉にせず、うなだれた態度で心境を表す綾。 しかし安心するのは早すぎた。 トラブルの元(の予定)となるものは手元にある。 「……さて、どうしたものかな?」 リビングに戻った綾は、届けられた箱を置く。 日向に卵を置いたら、自然に茹で卵が出きるぐらいに暑いこの炎天下。実はかなり汗だくの状態。 そんな状況下で、綾は自身に送られた箱を眺める。 その箱にはお札程度の大きさの赤い札が、不吉なまでにベタベタと箱の下地の色が見えないぐらい貼られていた。 「まるでハリボテの箱だな。しかしそれ以上に……」 静かに頭を抱え、二度目のため息を吐く。
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