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「……『赤札』か。オヤジよ、どこの世界に核兵器並みに被害を及ぼす危険物を送る親がいる。」
深い二度目のため息を吐いた彩は、気の進まない様子で、箱の上に手を置き、目を瞑る。
そして呼吸を整え、精神を集中させる。
「……戒め 解きて姿を現せ」
その言葉の後、『赤札』が生きているように次々と跳ね飛び、幾多の『赤札』が綾の周りを旋回する。
だが、綾はそんな事に驚きもせず、目を瞑ったまま、右手を前に伸ばす。
「戒め 集いて我が手に」
旋回する『赤札』は、次々に我先よと綾の右手に激しく集まり、手中に収まる。
その姿はまるで、紙の式神を操る年若き陰陽師の如く、堂々としていた。
……だがそれ以上に、無関心さも見るだけで伺い知れるが。
そんな綾の前に、宙を舞う一枚の札があった。それは『赤札』と違い白い札で何か文字が書かれていた。
それを綾は手慣れた手つきで掴み、書かれているメッセージを読む。
差出人は霧咲圭一郎。
それは綾の父親の名前だった。
拝啓
やあ、綾。元気でやってるかい?
育つところは育っているかな?
まあ、これを聞いたら綾は怒るだろうけど。
そしていろいろ言いたいし自慢もしたい。
しかし今回は自慢話もなければいつも贈る発明品もない。
その代わり、誕生日プレゼントを贈ろうと思う。
お前の事だから季節外れだの、要らないだの、いろいろ文句を言うだろうし、中身を見る前にこの手紙を見るのだろうから、あえてプレゼントが何であるかは、ここでは言わない。
しかしきっと気に入るだろう。
大事にしてほしい。
父より
「……オヤジ」
しかし、このメッセージにはまだ続きがあった。それは……
追伸
箱の中身にもメッセージがあるので、必ず見るように。
つーか、それが本題だったりして。
ヨロシク!
「……何がヨロシク、だ。」
父親の何気ないおちゃらけぶりに、少々怒りを覚える綾。
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