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箱の中身……それはどこぞのAVのようなシチュエーションを感じさせる『者』だった。
厚手の生地の黒いワンピースに、夏であるはずなのに、首周りに白い獣毛製のマフラー。
極めつけは、ボブカットにショートヘアのてっぺんにある、二本の小さな角と、あるはずのない動物の耳……
そんな格好をした小柄な『女の子』(幼子)が、小さな箱の中に体を屈めながらも気持ち良さそうに寝息をたてて眠っていた。
「……オヤジよ、今まで発明家を自称するバカ親だと思っていたが、あんたはいつから幼女誘拐犯になった……」
流石の綾も、コレには驚きを隠せない……
「んな訳、ないな。」
……事はなく、逆にやれやれといった様子だった。
だが、綾には一つだけ、懸念すべき事があった。
綾が寝ている女の子の頭と耳に恐る恐る触れ、その感触を感じ取った。そして見る見る顔が青ざめ、綾の中で、疑念が確信に変わった。
「………本物だ。」
綾はその場で膝をついて、ガックリと落ち込む。
その姿は、戦の策が何の落ち度もないのに、開始十秒も掛からず全ていとも簡単に破られた策士のようだった。
「この耳と角、信じたくないけど、認めたくないけど、本物だぁ~………!」
「………ャギ?」
「…………!?」
綾の情けない声に、どこか聞き慣れない『声』が確かに紛れ込んだ。
周りには無論誰もいない。
居るのは、綾……と、箱に入っている眠りの女の子。
「まさか……」
綾は改めて箱の中を見る。
そこには既に起きて目を可愛くこする、あの女の子の姿があった。
欠伸を声なく行う。
それから、辺りをキョロキョロ見回してやっと自分が今どこにいるかわからない様子を見せて、その小さな両手をこめかみに当て、一言。
「………ヤギ??」
「ヤギ??」
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