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久
「久しぶりだな」
晴れた日のオープンカフェで男の声が俺に向かって掛けられる。
「あぁ、お前は相変わらず元気そうで何よりだよ」
新聞から顔を上げずに答える。
「まったく…お前も相変わらず落ち着き払いやがって」
男は楽しそうにガハハと笑った。
「んで、なんの用なんだ?俺だって暇じゃないんだ」
「ま、その辺も学生の時から変わらずだな」
少しイラついている俺に対して懐かしむ態度で続ける男。
「ま、今日呼び出したのは、ちょっと頼みたいことがあってな。」
俺は『頼みたいこと』の一言で軽く身構えた。 学生時代、コイツの頼みを聞くとろくなことにならなかった。
「俺のことを成仏させてくれよ」
「は?」
コイツは寝ぼけてるのだろうか? 俺には霊能力は愚か霊感すらないはずだが…
「どういうことだ?お前はまだ死んでないだろう」
「いや、これから死ぬんだ」
「どういうことだ?」
俺は確実に混乱していた。
「…… …。」
ヤツの声が急に聞こえなくなった。 俺の意識が霞む。
そして、気付くと自分の家のベッドの上に寝ていた。
(今の夢は…なんだ…?)
とりあえずテレビを付ける。 するとヤツが1週間前から登山中の山で行方不明になっているとのニュースが流れていた。
(そういうことかよ…)
やっぱり、アイツに頼み事をされるとろくな事にならない。 そう思いながらアイツの遺体を探している。
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