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僕はいつの頃からか壁を見上げていた。 何で出来ているかわからないけど、硬くて、厚くてただただ高い壁。 そんな壁を見上げてる僕を見た人は言った。 「君々、それは心の壁だよ。そんなに厚くて高い壁で外と遮って何になる?」 また、ある人は 「能力の壁の前では何人たりとも無力なものだよ。皆それに気付いて諦めて壁から離れるものサ」 と言う。 僕はその言葉に対し何も応えなかった。 ただひたすらに壁を見上げ続ける。 ある日、子どもがやってきて僕に尋ねた。 「お兄さん、その壁の向こうには何があるの?」 僕は何かしら応えてあげないといけない気がして僕は言った。 「どうしてだろうね。お兄さんにもわからないよ。でも、僕はここに居なきゃいけない。そんな気がするんだ。」 「…お兄さん、開けなよ。お兄さんの前にあるのは壁じゃなくて扉なんだから。」 そう言うと子どもは消えた。 そして、壁だと思っていた扉をまた見ようとしたら、視界が開けた。 そして扉の向こうは何と言うことはない、普通の光景だった。
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