さよなら、

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「よっしゃ、じゃあね」 誰に向けるでもなく、 放たれた軽い挨拶。 それが彼の、 最後の言葉になるはずだった。 学校のプールのジャンプ台から、 歩くように一歩踏み出すような そんな感じ。 崇拝に近い、地面がある。 あそこに落ちて、落ちて 大好きなアイドルに、 飛びつきたいのにできない、 オタクの心理。 彼の場合は、アイドルが 地に変わっただけのこと。 「‥」 左足は、宙を踏む。 あ。 落ちる。  
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