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「黒重っ!早く起きないと遅刻するわよっ!」
母さんのがなり声にびっくりして僕は飛び起きた。
部屋の中はカーテン越しから白い光が漏れていて、今日がとびきりの晴天だということを示している。
「またあの夢か……」
まだ頭の中がぼんやりしている。
最近よく夢で見る……。僕と同じ『クロエ』という名前で、僕と同じ年くらいの少年が出てくるお話。
「死神が名付け親だなんて……漫画の見すぎかなあ」
僕は大きく伸びをしてあくびをひとつ。
「さて。学校に行く用意しなきゃ」
「クロッ!おっはよう」
その声とともにバシンと良い音が響き渡る。そして同時に背中に軽い痛みが襲ってきた。
「痛いよ……健流」
僕の背中にかばんによる攻撃を繰り出してきたのは藤堂健流(トウドウタケル)。クラスメートであり僕の幼馴染であり腐れ縁の親友というやつだ。
「相変わらずぼんやりしてるからだよ!」
よくわかんない理屈を言って健流は爽やかに笑った。
「意味わかんないし、僕はそんなにボーっとしてないよ。今日はたまたま夢見があんまりよくなかったんだ」
「夢?おまえ夢とか覚えてるんだ?」
健流は夢を覚えている奴が珍しいのか食いついてきた。
僕はちょっと面倒くさいな、って思ったけど今朝見た夢を話してやった。
「へえ~。死神が名付け親ねえ。んでおまえと同じ名前……」
珍しく健流は真面目に考え込んでるみたいだ。
顎に手を当てうつむき加減で呟いた。
「たんなる夢だよ。何真剣になってんの?」
僕はそんな健流がおかしくて、笑いながら言う。
「いや、なんかその話、聞いたことがあるような気がしてさ」
そこに学校の予鈴の鐘の音が響き渡る。
「あっ!やべ!クロ、急ぐぞ」
健流の慌てた声とともに、まだ校庭のグランドをのんびり歩いていた僕らは全速力で走りだした。
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