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そうしているうちにようやく雨は止み、日が射してきた。
外に出ると日が傾いており、そろそろ暮れそうなので家に帰ることにした。暗くなってからここを抜け出すのが簡単ではないことなど分かりきっている。
矢上と僕は、来たときと同じように前後に並んであるいた。僕はまだ道を覚えていないし、きっとそうでなくても彼は僕の前を歩くだろう。
道はぬかるんでいて足場が悪いため、来る時よりも俄然口数は少なくなる。雑草の生えた緩い泥の上を慎重に歩いた。お互い自分の足元に気を取られていて、周りを見る余裕すらない。
矢上の姿が突然視界から消えたのに気付かなかったのも、恐らくそのせいだろう。
地面に気を使っているうちに、置いて行かれたのかもしれない。そう思って焦り始めた時、下の方から矢上の声が聞こえた。急いでそちらの方を見てみると、彼は僕の足元の雑草に捕まっていて、ほとんど崖のような斜面に腹ばいになっていた。
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