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どうして矢上はこんな状態になっているのだろう。なぜ気付かなかったのだろう。いつの間にこんな道へ来たのだろう。
混乱した頭にいくつもの疑問を浮かべながら、僕は一心に矢上の腕を掴んだ。彼もそれに応じて、もう一方の手で僕の腕を掴み返してくる。
だが、その状態から良い方向へ進むことはなかった。僕は余った手で地面を押し上体を起こそうとするが、ぬかるんだ土がそれを許さない。押すたびに地面は削れ、徐々に僕もバランスがとれなくなってくる。
崖のずっと下には、濁った川が激しく流れている。たとえ流れが遅かったとしても、一度飲まれれば上がってくることはできないだろう。
僕は堅く目を閉じた。腕もそろそろ悲鳴を上げ始め、鋭い痛みが走っている。せめて手が離れないよう強く握り締めるが、先に削った地面のせいで体が前のめりになってきた。
このままでは、矢上と一緒に落ちてしまうかもしれない。
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