序章

3/4
前へ
/174ページ
次へ
 僕は彼女から目線を逸らし、中央の噴水を眺めた。昼間だというのに、この公園には僕と鈴野以外誰もいない。だからこそ僕はここに来たのだが、そもそも公園に来たこと自体が間違いだったのかもしれない。 「そろそろ帰りませんか」  無駄だとは思いながらも、僕は彼女に提案してみた。  彼女はこちらに乞うような目を向けて言う。 「もう少しここにいちゃだめ?」  予想通りだ。逆らうわけにはいかない。僕は力なく笑った。 「仕方ないですね」  鈴野はぱっと顔を輝かせ、礼を言った。いったいここの何が彼女を惹きつけるのだろう。
/174ページ

最初のコメントを投稿しよう!

54人が本棚に入れています
本棚に追加