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僕は鈴野が無邪気に公園の景色を眺める姿を見ながら、かつての友人のことを思った。彼女を見ていると、いつも彼のことを思いだしてしまう。彼の名前は矢上と言った。
矢上は賢く大人びた人間で、同い年ながらも彼に比べればまだ幼い僕をいつも支えていた。もし今彼が生きていれば、と何度も考えた。だがそれは、ただ虚しくなるだけの意味のない仮定だ。
とは言え、矢上の死は僕にとって決して負の意味しか持たないわけではない。むしろ、そのおかげで僕は今の僕の柱とも言えるものが形成できたのだ。
しかしそれも、僕の身勝手な解釈なのかもしれない。その「柱」は本来僕の中にも、あるいは矢上の中にも存在し得ない、ある種の特異さを持ったものだったのだ。
矢上を殺したのは僕だった。今更言い訳のしようもない。盲目的に彼を信じ、純粋無垢な信頼を寄せていた浅はかな僕が彼を殺したのだ。
だからこそ僕は、無垢が憎い。
ことの起こりは、小学生時代まで遡る。
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