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僕の十二回目の誕生日の日、矢上は面白い場所を見つけたと言って僕を連れ出した。その頃僕は狭い田舎町に住んでいて、知らない場所などどこにもないはずだった。
と言うより、遊ぶ物や施設が何も無いため、自然と色々な所へ行ってしまうのだ。だが僕ぐらいの年頃になると行ける所には行き着くしてしまう。だから新しい遊び場を見つけるたびにみんなに報告すると、一日だけ英雄扱いされるという習慣があった。
だがその日、矢上は僕だけをそこに連れて行こうとした。恐らく誰も知らないその場所へ、二人きりで行こうというのだ。それはほとんど規則を破っているようなことで、僕はそのような意味でも胸を高鳴らせていた。
彼が向かったのは、駅の裏側にある小高い山だった。季節柄、青い葉が瑞々しい景観を演じている。だが当然そこには僕も何度も来ているため、本当にそんな場所があるのか怪しいものだと思った。もしかすると既に知っている場所かもしれないと勘ぐりながらも、せっかく矢上が連れて行ってくれるのだからと、僕は何も言わずについていった。
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