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「で、何処行くつもりなの?」
僕の前を活き活きと歩く彼女に僕は聞いた。
彼女は振り返り、にっこりと笑って見せた。
「昨日も行ったとこ。」
そういうと彼女は再び歩き出した。
昨日も行ったとことなると、彼女が昨日行った所で僕がしっているのは、本宮書店と駅前のコンビニだ。
もし今から行くのがこのどちらかで、どちらかの内のコンビニだったら、僕はきっと帰っているだろう。折角の夏休み初日に、コンビニに行くのを付き合ってほしいなんていうのは、嫌すぎる。
そんな僕の想いが通じたのかどうかはしらないが、彼女は商店街のほうへ向かって歩を進めた。
予想通り、彼女は本宮書店に用があったらしい。
本宮書店に入るとすぐに、薫さんが僕を見つけたのか話し掛けてきた。
薫さんは本の整理をしているところだった。
「やあ淕君。今日も来たのかい。」
「こんにちは。」
薫さんとそんな挨拶をしている内に、彼女は奥へと進んでいってしまった。不思議に思った。
「常連じゃないんですか?」
僕は彼女の方向を指差して言った。二日も連続でこの店に来たものだから、薫さんともそれなりの仲だと思っていたからだ。薫さんは客にとても愛想がいい。娘さんの贔屓目を除いても。
「いや、昨日初めて見た顔さ。特徴的な容姿だからよく覚えてる。ありゃあ真純と同じ学校の娘だろう。外人さんかい?」
どうやら薫さんも不思議に思っているようだった。
きっと真純さんから学校のことは聞いているのだろう。彼女や真純さんの通う学校は本当に規則が厳しい。学校帰りに寄り道なんてしたら、謹慎ものだという。
制服を見て、彼女がそんな環境にいることをわかってしまった薫さんだからこそ、彼女が昨日制服姿で本宮書店に寄り道しにきたことに、薫さんも戸惑っている様子だった。
おまけに、彼女は金髪碧眼だから、薫さんは日本人じゃないと思い、注意しづらいのだろう。実際のところ、彼女は日本語はペラペラなのだが。
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