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「淕君とはどいういった関係なんだい?」
僕が彼女のことを知っているように見えたのか、薫さんは聞いてきた。
「昨日、知り合いました。」
僕は正直に答えた。
すると薫さんに勘違いされた。
「淕君、見損なったよ。君という人間は、真純という者がおりながら、昨日の今日会ったお嬢さんに手を出しているのかね?」
いや、実際僕と真純さんこそ何もないのだが。そして手も出してない。
なんだか、否定するのも面倒くさくなり、僕はため息をはいた。
「まあ、淕君にも女性の好みはあってもおかしくないが。少なくともあの娘より真純のほうがいいと思うぞ。真純はしっかりと規則を守っているからな。」
なんだか話がそれてきたので、僕は「考えておきます」といって、彼女のあとを追った。
*******
「で、本が読みたかっただけ?」
昨日と同じように、上のほうの本をとるための脚立に座り、黙々と本を読む彼女に聞いた。
ただ、読んでいる本は、昨日と同じ参考書ではなく、映画化されている今話題の本だったが。
「ていうか、そんなとこで読まなくてもさ、読書スペース奥にあるじゃん。」 なおも本を読み続ける彼女に言った。
しかし彼女はそんな僕の忠告など無視で、ただ黙々と本を読み続けた。
「…僕、付いてきた意味あったのか?」
あまりにも無視されるので、つい愚痴をこぼした。しかし彼女は無反応だった。
仕方がないので、ほかの客の邪魔にならないよう、角に移動した。
彼女は相変わらず本を読んでいる。黙っていたら普通に可愛いのにな、とか思いながら僕が彼女を見つめていると、突然彼女は本から目をそらした。
「結城??」
僕が声をかけると彼女は僕のほうをまっすぐ見つめた。
そして先ほどまで無視していたにも関わらず、話し掛けてきた。
「リク君はさ、こういう本、読むの?」
「何、いきなり。」
「聞いてるの。」
相変わらず強引な彼女に少しムッとしたが、彼女が真剣だったので答えた。
彼女が手に持つ本の題名は『夏の日の思い出』。
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