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夏休み初日と僕
七月二十日
夏休み初日、空は雲一つない晴天。絶好の昼寝日和だ。
昼過ぎに起きて、今日は一日中部屋でゴロゴロするはずだった。
しかし、今日僕は九時に起き、しっかり朝食を食べて、十時きっかりには彼女……基、結城千衣の自宅の前で待機していた。
結局昨日の夜、彼女の誘いを断り切れず、同行することになったのだ。
彼女、結城千衣は腰まである鮮やかな黄金色のフワフワヘアーを持ち、今日の空のような透き通った碧色の瞳を持つ。
それだけならば聞こえは良い。
実際僕も、昨日初めて会った時、妖精だと思った。
しかし、彼女はお伽話に出てくるような、可愛い妖精じゃない。いや、可愛いことは可愛いのだろうけど。
結城千衣は、親に怒られた時に言われる、悪戯をしにくる妖精だ。
『悪いことをしたら妖精が悪戯しにくるよ』
まさにその妖精こそ結城千衣だと僕は思う。
昨日会ったばかりなのに何故そんなことを言い切れるかって?
それほどまでに初対面の印象が崩れていった、僕のショックが大きかったからさ。
僕がそんなことを考えている間に、彼女は家からでてきていた。
「どうしたの?」
何もない場所を見つめて物思いに更けていた僕に彼女が聞いた。
「いや、なんで此処にいるのかなあーって。」
「だって私はリク君の家を知らないから、私の家で待ち合わせするしかないでしょ?」
「いや、そういう訳じゃなくて……。」
このとおり、昨日会ったばかりだというのにこんな展開が起きているのは、彼女の強引な性格のせいでもあるのだ。
「じゃあ行きましょう。」
そういって彼女は僕の前を歩き出した。
僕はというと、彼女の後ろをてくてくと着いていった。
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