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びゅうびゅうという風といっしょに、
帽子おとこが入ってきた。
木のきしむ音がする。
家の中は暗い。
ばたんとドアをしめたら、
風は悲しそうに出てった。
帽子おとこは、
薄きたないベッドに腰をかける。
ふぅ、と、言う。
くらい部屋だなと、思う。
ふと、さみしそうに、
暗い天井をぼんやりながめる。
まどの外は、まだ、
風がびゅおびゅおと吹きつけ、
家の中に入るのをあきらめてないようだった。
風もさみしいんだろか。
町の人は帽子おとこがきらいなんだ。
口にはださないけど、
だって目がそういってる。
いつもそう。
おとこの口からは、
嘘ばかりがとび出すんだ。
おとこはひとり言のように、
ひとりぼっちの風にむかって、
つくり話をはじめた。
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