想いまでの距離

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2年の初冬のことだ。 「よう」 長身のそいつは無頓着に笑った。 「謹慎のあとの校内喫煙は不用心じゃねえのか?」 優等生の先公の犬が。大きな御世話だ。 奴は俺の隣に腰を下ろした。 「相棒はまだ入院してんのか?」 奴は睨み付ける俺にお構い無しに あ、俺にも一本と俺のセブンスターを勝手に抜くと美味そうに喫った。 「次期生徒会長の校内喫煙は不用心じゃねえのか?」と俺の吐いた毒にもあっけらかんとして 「生徒会室も最近は喫りにくくなってね」とにやりと笑う。 「それよりお前、バンドやってんだって?」 11月も末になると、屋上も決して居心地はよくない。 強風がまだ疼く口元と目尻の傷に染みる。 黙ってると奴は 「俺も入れろよ」と頓着無く言った。 「…誰に聞いた?」 「双葉ちゃんにね」 「双葉『ちゃん』!?」 つい大声をあげてしまってから俺は舌打ちをした。 奴は曰くあり氣ににやりと笑った。 「お前、あいつと出来てんの?」 俺は平静を装いながら訊ねた。 「氣になるか?」 「別に」 「中学が同じだったんだ」 「もうやってねえ」 俺は無愛想に言った。 「ふーん。好都合だな」 奴はアスファルトの地面で煙草を揉み消すともう一度言った。
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