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「お前は誰だ」   男は目の前の人間に話し掛ける   それは紛れもなく自分自身だった   「お前は誰だ」 鏡の中の自分も同じように語り掛けてくる ゲシュタルト崩壊 自我の確立に悩む男は自らを崖の淵へと追い込む 精神の崩壊を望んでいるのだろうか それはこの男にも分からない 吐き気が襲ってくる 頭には何かで叩かれるような強い痛み 男はここで鏡から離れる やはりその先が怖いのだろう しかしそんな男も一歩外に出ればたちまち人気者となる 「高宮先輩、おはようございまーす!」 「おはよう」 「おはようございます」 「おはよう」 学生達は皆、高宮が横を通り過ぎる際に頭を下げていく 高宮は一人一人に笑顔で返事をする 高宮は確かにこの瞬間、高宮として振る舞うことが出来るのだった 「高宮せんぱーい!」 その身長に似付かわしくない甲高い声の持ち主が高宮に向かって走ってくる 身長が180cmある高宮の横にさらに高い男が並ぶ 「笹島、もう少し静かにしろよ。近隣に迷惑だろ?」 「だって高宮先輩が居たんですもん!そりゃあ嬉しさで大声も出ますよ」 笹島はいつも高宮にべったりだった 一つ下にあたる笹島は中学のバスケ部に入部した際に高宮に出会った それからの仲である 高宮も笹島のことは嫌いではなかった
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