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ふと目の前に小さな白い狐が顕れた。
狐からは明らかな敵意を感じて、私は思わず悪寒が走る。
『お前、よくも主様を殺したね』
私は全く身に覚えがない。
という事は恐らく煉に向けられた敵意だろう。
煉は淡々とした表情で狐の敵意を受け流す。
「そうだけど、君の《主様》は犯罪者なんだよ。だから仕方なく殺した。何度も『やめなきゃ殺す』って忠告したんだぜ?それを無視して聞かなかったのは誰だと思う?」
『黙れ!人間風情が!主様を殺した恨み、我等と同胞が晴らしてくれようぞ!覚えていろ』
狐はスッと姿を消した。
「随分恨まれてたね。大丈夫?」
「うん。あの位の狐ならなんとかなるよ。あの狐が呼んでた主様っていうのは少し位の高い狐なんだけど、人を騙したり、殺したりする奴でさ。だから仕方なく。」
少しだけ哀しそうに笑う煉を見て私は複雑な気持ちだった。
審神者。それは誰もが簡単になれる存在ではない。
生まれ持った才能でしかなり得ない。
「狐ってさ、神社とかで奉られてるからか知らないけど何か人気じゃん?
憎まれないっつーか。
中には稀に高尚で善良な狐もいるけどさ、殆どは良くないんだ。
人間に悪い影響を与える。勘のいい奴を騙したりとかな。
人間とはきっと感覚が違うんだろうな。アメリカ人と日本人の文化や性格のタイプが違う様に狐と人間も違うんだ。
だから瑠華もあまり狐には関わらないほうがいい。」
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