76人が本棚に入れています
本棚に追加
/109ページ
「新月にも仕事」
死に神は月がいない晩も忙しい。
魂をいれた鎌の杖部分が闇夜に光る。ちょっと耳を澄まして死者の声をたよりに移動する。
呼ぶ声はケモノもいればヒトもいる。憐憫もなくはない死に神とて昔は生きていた者だったから。死に神になった時自分がなんだったかは忘れる。闇夜に包まれた中を死者たちは混乱した声でよぶのだ
「父さん」だったり「母さん」だったり「あなた」だったり「おまえ」だったり。
高いビルの上から声に耳を澄ます死に神の笑顔はあるわけもなく
いつから笑うのをしなくなったかなども感じることなく。
今夜もまた新月に死に神が空をかけていく
最初のコメントを投稿しよう!