第一話†佐倉 唯間†:東京某所 1月9日 PM 07:04

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確か父さんの部下の森林(もりばやし)という人。 その人の名前がきっかけとなって、父親との思い出が走馬灯のように駆け巡る。 森林という部下を家に連れて来た時。 いつも仕事に熱心だった父親の背中を見ている自分。 テレビに映っている父親。 そして仕事をしている父親の姿から、徐々に家での父親の姿へと写り始めた。 毎朝、家族の誰よりも早く新聞を見ている父。 仕事の忙しい父と久しぶりにキャッチボールをして遊んでいる小さな自分。 自分が幼い時から仲が良かった父と母。 「母さん!」 そう叫んで考え始める。 そうだ。母さんはどうしたんだ? 母さんは父さんの秘書だ。 もちろん、2人は会社でも大抵一緒にいるはずだ。 父が省長室で倒れたというなら、そこに母もいたはずだ…。 もしや―――。 「っ―――!」 その時、自分だけ家族に取り残されて、たった1人になってしまうかもしれないという、恐怖に襲われた。 それは胸が痛くて、呼吸が苦しくなって、目が熱くなった。
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