15人が本棚に入れています
本棚に追加
確か父さんの部下の森林(もりばやし)という人。
その人の名前がきっかけとなって、父親との思い出が走馬灯のように駆け巡る。
森林という部下を家に連れて来た時。
いつも仕事に熱心だった父親の背中を見ている自分。
テレビに映っている父親。
そして仕事をしている父親の姿から、徐々に家での父親の姿へと写り始めた。
毎朝、家族の誰よりも早く新聞を見ている父。
仕事の忙しい父と久しぶりにキャッチボールをして遊んでいる小さな自分。
自分が幼い時から仲が良かった父と母。
「母さん!」
そう叫んで考え始める。
そうだ。母さんはどうしたんだ?
母さんは父さんの秘書だ。
もちろん、2人は会社でも大抵一緒にいるはずだ。
父が省長室で倒れたというなら、そこに母もいたはずだ…。
もしや―――。
「っ―――!」
その時、自分だけ家族に取り残されて、たった1人になってしまうかもしれないという、恐怖に襲われた。
それは胸が痛くて、呼吸が苦しくなって、目が熱くなった。
最初のコメントを投稿しよう!