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《金兵》-in森の中-
「下ろして、金吾」
「だめ。お前歩けないんだから。」
「歩けるよ」
「歩けないだろ。立てないんだから。」
「う゛ー…。…っ。」
ぎゅう。
「ごめん…迷惑かけて。」
「…いつもだろ。」
悔しくて、悔しくて、堪らない。
お荷物にだけはなりたくなかった。
ねぇ、金吾。
僕の後悔も、涙も、痛みも、身体も、全部、全部置いて行って良いんだよ?
そんな事言ったら金吾は何て言うのかな。
「兵太夫、」
「…?」
「俺さ、兵太夫の背、越したし、七松先輩時代からの委員会の仕込みのお陰で体力とかも、あると思う。…強く、なったと思う。」
「…」
「だから…兵太夫は全然重荷なんかじゃない…から…変な事考えたりたら、許さないから。」
…エスパーかよこいつ。
震えながら言う?何、緊張してんの?
馬鹿みたいじゃん、僕も、金吾も。
全く、本当に、
「…金吾らしい」
「え?何?」
「何でもないよ、…馬鹿。」
あ、雨が降り始めた。
そう言って金吾は空を見る。
解ってるくせに。いつも、見逃してくれる。
「ありがとう」聞こえない位の声で呟いてから僕は金吾を抱きしめた。
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乙班:金吾・兵太夫
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