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《団庄》-in忍たま長屋前廊下-
いつもの俺らしく。
いつもの僕らしく。
□
息を吸って、吐いて。
よし、
「庄ーっ左!」
がばちょっ
「うわっ!」
「うわっ…て!何かショックー…、俺帰って来ちゃ駄目だった?」
驚いた庄左は僕を見るなり一瞬目を大きく開いて硬直する。あ、前より髪が長くなった。
■
「だ…んぞ?」
心臓が壊れそうだった。
「やぁっと帰って来れたー!疲れたー!本っ当に疲れた!」
そう言ってはぁ、とため息をつく。
心臓ばくばくいってる。嗚呼、いつもの団蔵だ。“いつもの”団蔵になろうとしているんだから、今の団蔵はいつもの団蔵に違いない。じゃあ僕も“いつもの”僕で、いなきゃ。
「…本っ当に遅かったね。お疲れ様。」
「うん。もう泥だらけでさ!」
泥だらけ、6割。血まみれ、4割。表現的にはそんな感じ。絶対痛いよ、その傷。
□
庄左はいつもみたいに冷静な事を言う。良かった。
「僕は今、お風呂から上がったんだけど。」
「Σあ!そうだよねっ…ごめん、汚れちゃうよね」
「別に…構わないけど」
ふんわりとした髪の匂い。無我夢中で走ってきたから気づかなかった。
「まじごめん…てかもう全速力ダッシュしたよー!」
「うん」
「聞いて!?数十人の奴らに追いかけられちゃってさー」
「…うん」
「んで、…本当に…必死に逃げてさー…」
「…うん」
「…庄左に…」
逃げてる最中に
思い浮かんだのは。
せめて最期にと
誰かに願ったのは。
「庄左に…会いたくってさぁ…」
そう言って庄左の肩に顔を埋めてさっきよりも強く抱きしめる。
でも庄左は俺のその手を優しく退けて、振り返って。
「お帰り、団蔵。」
そう言って。頬には涙がつたっていて。
油断してたら庄左に抱きしめられた。
ぎゅうって。震えながら。
「ごめん、やっぱ僕いつも通りに出来ないや」なんて、「本当に良かった」なんて涙声で言われて。
そしたらなんか、いろんなもんが一気に溢れ出してきて。
俺は庄左を抱きしめ返した。
■
「…っただいま…!」
「…うん…無事で良かった…」
「会いたかった…庄左っ」
「うん、僕もだよ…よしよし。」
それから2人で泣き続けた。泣き続ける団蔵をあやすつもりだったけど、僕も泣いていたからあまり上手くいかなかった。落ち着いたら医務室に行こう。他の皆の事も聞かなきゃ。そう思いながら僕は未だ泣き続ける団蔵の背中を優しく叩いた。
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甲班:庄左ヱ門
乙班:団蔵
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