【連載】ただいま。

3/12

65人が本棚に入れています
本棚に追加
/58ページ
《団庄》-in忍たま長屋前廊下- いつもの俺らしく。 いつもの僕らしく。 □ 息を吸って、吐いて。 よし、 「庄ーっ左!」 がばちょっ 「うわっ!」 「うわっ…て!何かショックー…、俺帰って来ちゃ駄目だった?」 驚いた庄左は僕を見るなり一瞬目を大きく開いて硬直する。あ、前より髪が長くなった。 ■ 「だ…んぞ?」 心臓が壊れそうだった。 「やぁっと帰って来れたー!疲れたー!本っ当に疲れた!」 そう言ってはぁ、とため息をつく。 心臓ばくばくいってる。嗚呼、いつもの団蔵だ。“いつもの”団蔵になろうとしているんだから、今の団蔵はいつもの団蔵に違いない。じゃあ僕も“いつもの”僕で、いなきゃ。 「…本っ当に遅かったね。お疲れ様。」 「うん。もう泥だらけでさ!」 泥だらけ、6割。血まみれ、4割。表現的にはそんな感じ。絶対痛いよ、その傷。 □ 庄左はいつもみたいに冷静な事を言う。良かった。 「僕は今、お風呂から上がったんだけど。」 「Σあ!そうだよねっ…ごめん、汚れちゃうよね」 「別に…構わないけど」 ふんわりとした髪の匂い。無我夢中で走ってきたから気づかなかった。 「まじごめん…てかもう全速力ダッシュしたよー!」 「うん」 「聞いて!?数十人の奴らに追いかけられちゃってさー」 「…うん」 「んで、…本当に…必死に逃げてさー…」 「…うん」 「…庄左に…」 逃げてる最中に 思い浮かんだのは。 せめて最期にと 誰かに願ったのは。 「庄左に…会いたくってさぁ…」 そう言って庄左の肩に顔を埋めてさっきよりも強く抱きしめる。 でも庄左は俺のその手を優しく退けて、振り返って。 「お帰り、団蔵。」 そう言って。頬には涙がつたっていて。 油断してたら庄左に抱きしめられた。 ぎゅうって。震えながら。 「ごめん、やっぱ僕いつも通りに出来ないや」なんて、「本当に良かった」なんて涙声で言われて。 そしたらなんか、いろんなもんが一気に溢れ出してきて。 俺は庄左を抱きしめ返した。 ■ 「…っただいま…!」 「…うん…無事で良かった…」 「会いたかった…庄左っ」 「うん、僕もだよ…よしよし。」 それから2人で泣き続けた。泣き続ける団蔵をあやすつもりだったけど、僕も泣いていたからあまり上手くいかなかった。落ち着いたら医務室に行こう。他の皆の事も聞かなきゃ。そう思いながら僕は未だ泣き続ける団蔵の背中を優しく叩いた。 **** 甲班:庄左ヱ門 乙班:団蔵image=156030301.jpg
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!

65人が本棚に入れています
本棚に追加