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《三&しん&喜》-in忍術学園-
満月。
木と木の間から見える満月は暖かかった。
体が冷たい。傷が、痛い。
あれから…何日経ったのか分からないけど、もう14日は過ぎたんだと思う。
「…はぁ。」
ため息、一つ。
僕は…退学、なんだなぁ。先輩から《進級は難しい》って聞いてはいたけれど、本当だった。うん。僕がこの学年まで来れたことはある意味で奇跡だったんだと思う。
でも、
「もう少し、皆といたかったなぁ…。」
何でも最後で。のろまで。
皆に迷惑かけっぱなしの僕だったけど。 それでも…。
ぐうぅぅう…
…。一人で苦笑い。こんな時でもお腹空くんだな。僕らしいかも。
ふふ、何だか笑えてきた。
「お腹、空いたなぁ…」
言葉にして、言ってみた、
…その瞬間。
「…あ、れ?この…においは…」
絶対に忘れない、このにおいは。
「金楽寺の……おしるこ?」
でも金楽寺はこの辺の近くじゃない。もっと遠くの方にあって…。
じゃあ、誰が作ってるの?
「ー…っ」
反射的に体が動いた。体全体が合図を送る。走らなきゃいけない。体が壊れても。あきらめちゃいけない。血が溢れ出しても。止まっちゃいけない。心臓が止まっても。走って走って走って、走った。
そして、見えた、光。
「忍術…が、く園…っ」
学園中が真夜中なのに煌々と光っていて、皆が正門近くでいた。下級生も上級生もお祭りみたいに皆でがやがや騒いでいる。取り囲むのは巨大な鍋。
「っしんべヱ!!!!」
僕に気づいて叫ぶ声。喜三太。ああ、泣かないで。早足で正門に駆け寄る。皆がこっちを見てる。そして正門に足を踏み入れたその時。
大きな音をたて、
正門が閉まった
…瞬間。
湧き上がる歓声。
皆嬉しそうに僕を見る。
「たった今15日を過ぎた。だから、しんべヱ、みんな合格じゃ。」
学園長先生も泣きながら、嬉しそうに僕の頭を撫でた。酸欠の脳をゆっくり落ち着かせながら僕はへたん、と座り込んだ。皆の拍手が聞こえる。数人の嗚咽も聞こえた。喜三太と、三治郎が…目にたくさん涙をためて、そして何も言わずにがくんとうなだれて僕の傍で大泣きした。その涙は満月よりも暖かくて。は組の皆も集まって。皆でうわぁんって。それが、僕には嬉しくて。…涙が出た。
本当に帰ってきて良かった。
こんなに心配かけてたんだね。
ごめんね ありがとう。
「 た だ い ま 。」
*********
甲班:喜三太
甲班:三治郎
乙班:しんべヱ
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