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⚠《金兵》反則!
「あ゛ー…だっるい。」
「さいですか。」
「体育とかやりたくないっての。雨降らないかなぁ…」
さっきから俺の隣であーだこーだ体育への恨み言を述べるジャージ姿の僕様姫君。
「お前さー…運動神経めちゃくちゃいいのにもったいないと思わないか?」
「別に思わないね。あー…次は雨を降らせて体育を中止にさせるからくりでも作ろ。」
そんなの作れたらノーベル賞貰えるよ。
よーい、ドンッ!
そんな事を思いながらふと声のする方を見ると女子が50mを走るのが見えた。
うは。あの女子速い!男子の中盤の速さの奴らを絶対に余裕で抜ける位に速い。颯爽と走りきるその姿は凄く格好良かった。
少し息切れをしてから汗を拭う。走りきった後の清々しそうな顔。あれは間違いなく自己ベストだろ。…たかが女子が50m走っただけなのに、俺はあの女子の走りに対する姿勢に感動した。
「…何女子ばっか見てんだよ、変態。」はっと我に返る。ちょ、変態なんかじゃないぞ。俺は勘違いしているいずれノーベル賞に挑むだろう体育嫌いに今の感動を語ってやろうと思った。
「いいか笹山、あのな…ッ!?」
光の速さで、笹山から目を逸らす。
ちょ、ちょ!?
何だ今の…!
なんか
すごい…可愛かった…ような…?
ちょっと、上目遣いで。
ちょっと、ふくれて。
こんな、笹山見たことない。
夢!?これは夢だな!!あ、あはは!!
「…女子ばっか見てんな…馬鹿」
…………。
…顔は、見てない、けど。
ちょっと俯いて、言ったのは、
分かった。
HAHA…HA…
…あー
もう、
やばい。
「…笹山」
「何だよ」
むすっとした声。
「…今の反則…。」
パーン。
きっつい平手打ちをかまして笹山はどっかへ行ってしまった。多分夢前の所かな。きっと僕を半殺しにするからくりでも作るつもりだろう。今の平手打ちの威力が強すぎて危うく意識が飛びそうになったっていうのに…。ため息をついて痛みが走る左頬をさする。でもまあ、
(たまには素直なあいつも…良いかな?)
雲一つない、晴れた四時間目のこと。
*********
「夢前!!今から皆本を9割殺しにするからくり作るから手伝って!」
「え!?てか笹山顔真っ赤だよ!?どしたの!?」
「っ何でもない!」
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