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《きり乱》 -in医務室-
「なぁ、乱太郎~もう包帯いいって!傷塞がった!」
「全然塞がってないよ!黴菌入ったらどうするの?」
そうやって乱太郎の包帯巻きの作業は俺の右腕にさしかかる。シュル、と巻いてくその手つきはお手の物。ダテに保健委員やってるわけじゃないわ。
あれから4日たった。もう皆医務室から退室してそれぞれの長家が病室になっている。それにしても兵太夫はひと月は立てない位足に傷を負ってるし、伊助も左腕が折れてて数週間は使えんだろうし…しんべヱなんか約二週間近くの飲まず食わずや出血ですげー痩せたし…あ、いや、今その分めさ食ってるから何とも言えんけど。壮絶だったと思う。なんとか軽い切り、刺し傷で帰ってきて今なんとか普通に生活出来てんのは俺と金吾と団蔵だけ。…いや、結構マジに頑張った。
…正直な話。
死ぬかと思った。
表現だけじゃなくて、本当に。
1人に対して数十人が殺気立って殺しにかかる。逃げるので手一杯。情報は手に入れたからあとは逃げるだけ。
《また忍術学園で…!》
約束でもない言葉を誰かが最後に言い放った後、ばらけて…皆の状況とか解んないまま逃げたけど。油断してたら確実に死んでた。
(…ん?)
いろいろ考えてた思考が乱太郎の手の動きで止まる。不思議に思って顔をあげると…乱太郎は泣いてた。
「Σどっ、どした!?」
「…っ、ごめ…また…泣いちゃって…」
乱太郎は俺が帰ってくる前から後までずっと泣き通しだった。帰って来ない不安や帰ってきての安堵。涙の種類は様々。
乱太郎は俺の右腕を優しく撫でながら言った。
「…今…回は、本当に、危ないって思った…」
乱太郎は
「みんなが、…きり丸が、帰って来れないかもって…そんなっ…気がして…」
何度も止まりながら
「最低だよね…っ、みんなを…信じれてなかった…ごめん…だけど、」
それでも、丁寧に
「本当に…良かった。」
言葉を紡ぐ。
…本当に
「俺も…そう思う。」
誰かが言った約束でもない約束を誓いに代えて。
結局果たしてしまっている俺たちを、なんて名前をつけて呼ぼう。
俺の言葉に乱太郎は
桃の花が咲いたように笑った。
《愛しい》
「なぁ、乱太郎。」
「なぁに?きりちゃん。」
絶対帰ってくるから。
「…ただいま。」
俺が何処に行ってもこの言葉を返して欲しい。
「…おかえりなさい。」
花のような、その笑顔で。
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甲班:乱太郎
乙班:きり丸
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