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夜のカーテンは、犯罪を隠してくれる。月の光は魔物を駆り立てる。特に、満月の日は。
雑踏の跡すら残らない夜の街で、吸血鬼は冷たくなった屍を前に唖然としていた。人間の殺し屋に注文した“死したばかり”の人間とは違っていたからだ。
殺し屋シルバーは言う。
「注文通り、死体だ」
注文通りではない。これでは血の鮮度が悪すぎる。
「おまえの名前からして嫌な感じはしていたさ。ふざけるな。鮮血でないと、口に合わんのだ!」
銀という名の殺し屋は悪びれる素振りもなく、冷たい金属のような目をしていた。
「バケモノが。文句があるなら、自分で殺しゃあいいでしょうよ。バケモノなんだから」
夜の闇は深く。殺し屋の姿はすぐに消えてしまった。
吸血鬼はやるせなく、すっかり冷たくなったカラダを犯した。歯を屍に突き刺し、ゆっくりと血を吸い出す。
喉を鳴らして飲み込むが、泥水を飲んでいる気分だった。
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