766人が本棚に入れています
本棚に追加
「いつもご馳走様です」
微笑んだ胡蝶蘭に鈴村は首を振った。
「…ところで…」
何か言いにくそうに口を開いた鈴村に、胡蝶蘭は「はい」と首を傾げる。
「……今日はちと化粧が濃くないか?…この間の方がお前らしいが…」
まだ通っている日が短いため解らないが、この間来た時の方が良い化粧具合だった。
男に良い化粧具合だと思うのも理解しかねるが…。
「…そうですか?生憎今日は白粉を切らしてしまいましてね。人のを借りたんですが、やはり自分の物でないと扱いづらいですね」
微かに警戒の色を映した目をして微笑む胡蝶蘭に、鈴村は「しまった」と思った。
もしかしたら触れてはいけない話題だったのかもしれない。
「……ん?」
反省するが、すぐに胡蝶蘭の顔を覗き込む。
「お前その痣はどうした!?」
化粧の下にうっすらと青くなった痣が見える。
「これは……」
素早く覆い隠す仕草に、鈴村は何事かあったことを確信した。
最初のコメントを投稿しよう!