其ノ壱

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朝方鈴村は出された額をきっちり支払って出て来た。 床入りすることはなかったし、その気もなかったわけだが、さすが華だけあっで胡蝶蘭゙は高かった。 「あんなに気前の良いお侍様は初めてだね、胡蝶蘭」 蘭華の主人、由は夕方まで仕事のない胡蝶蘭の着替えを手伝いながら笑んだ。 「まぁ、それもいつまで続くかわかりませんがね」 そんなに金を持っているようにも見えない。 胡蝶蘭は僅かにため息をつくと布団に潜り込んだ。 「寝ます。」 一言そう言うと、目を閉じ、由は着物や簪を丁寧に片付けると、部屋を出て行く。 「………。」 足音が遠のくのを確認すると、手のひらに隠した簪をそっと撫で、胡蝶蘭は溜め息をついた。 午後になれば起き出し、ボロの着物に着替えて外へ出掛ける。 適当に結った髪が返って色っぽく、道行く男が振り返る。 昨日と同じ場所に腰を下ろすと、胡蝶蘭はぼんやりと空を仰いだ。
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