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「え?」
きょとんと包みを見つめる胡蝶蘭の膝に包みを置くと、不思議そうな目で鈴村を見つめた。
「握り飯は嫌いか?」
ぶっきらぼうに訊ねると、胡蝶蘭は首を振る。
「頂いていいんですかい?お侍様の昼食でしょうに…」
「俺はいい。食え。」
半ば強引に勧めると、胡蝶蘭はくすりと笑った。
「じゃあ…遠慮なく頂きます」
握り飯を1つ手に取り口へ運ぶ。
焼き魚が入っている。
具が入っているなんて豪華な握り飯だ。
腹が減っていたのか黙々と食べ続ける胡蝶蘭を眺めてから、鈴村は布から更に水筒を取り出した。
「茶だ。」
短く言って胡蝶蘭の隣に置く。
「…ありがとうございます」
礼を言って会釈すると、鈴村は頷いただけで他には何も言わなかった。
「…私を餌付けして何かなさるおつもりで?」
口端だけ持ち上げた笑みに、鈴村は首を傾げた。
「何故そう思う?」
「………。」
最後の一口を口へ放り込み、胡蝶蘭は包みを畳んだ。
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