其ノ壱

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「え?」 きょとんと包みを見つめる胡蝶蘭の膝に包みを置くと、不思議そうな目で鈴村を見つめた。 「握り飯は嫌いか?」 ぶっきらぼうに訊ねると、胡蝶蘭は首を振る。 「頂いていいんですかい?お侍様の昼食でしょうに…」 「俺はいい。食え。」 半ば強引に勧めると、胡蝶蘭はくすりと笑った。 「じゃあ…遠慮なく頂きます」 握り飯を1つ手に取り口へ運ぶ。 焼き魚が入っている。 具が入っているなんて豪華な握り飯だ。 腹が減っていたのか黙々と食べ続ける胡蝶蘭を眺めてから、鈴村は布から更に水筒を取り出した。 「茶だ。」 短く言って胡蝶蘭の隣に置く。 「…ありがとうございます」 礼を言って会釈すると、鈴村は頷いただけで他には何も言わなかった。 「…私を餌付けして何かなさるおつもりで?」 口端だけ持ち上げた笑みに、鈴村は首を傾げた。 「何故そう思う?」 「………。」 最後の一口を口へ放り込み、胡蝶蘭は包みを畳んだ。
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