其ノ壱

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「さあてね」 意味の有りそうな笑みに片眉を上げ、鈴村は胡蝶蘭を見つめた。 それからふと思い出したように手を打つ。 「そうだ。飴をやろう」 「あめ、ですか?」 見上げる胡蝶蘭の目はきょとんとして、それからにんまり笑った。 「それは今夜店へいらしてくれる。と、いうことですかい?」 意地悪く笑む胡蝶蘭に、布の中を探っていた鈴村は「は?」と顔を上げた。 「生憎今夜は同僚と食事をする約束をしてな。……というか飴をやるのは店へ行くと言う約束事になるのか?」 不思議そうに訊ねると、胡蝶蘭もきょとんとした顔をした。 それから、 「………。お侍様は純粋でいらっしゃる」 と、くすくす笑い始めた。 何だかは知らないが、笑われたのは癪だ。 しかし楽しそうに笑ってくれたので良しとしよう。 鈴村は布から拳程の大きさをした巾着袋を取り出した。 鮮やかな紅い色をしている。 その美しさから高価な物であることが伺えた。
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