766人が本棚に入れています
本棚に追加
「さあてね」
意味の有りそうな笑みに片眉を上げ、鈴村は胡蝶蘭を見つめた。
それからふと思い出したように手を打つ。
「そうだ。飴をやろう」
「あめ、ですか?」
見上げる胡蝶蘭の目はきょとんとして、それからにんまり笑った。
「それは今夜店へいらしてくれる。と、いうことですかい?」
意地悪く笑む胡蝶蘭に、布の中を探っていた鈴村は「は?」と顔を上げた。
「生憎今夜は同僚と食事をする約束をしてな。……というか飴をやるのは店へ行くと言う約束事になるのか?」
不思議そうに訊ねると、胡蝶蘭もきょとんとした顔をした。
それから、
「………。お侍様は純粋でいらっしゃる」
と、くすくす笑い始めた。
何だかは知らないが、笑われたのは癪だ。
しかし楽しそうに笑ってくれたので良しとしよう。
鈴村は布から拳程の大きさをした巾着袋を取り出した。
鮮やかな紅い色をしている。
その美しさから高価な物であることが伺えた。
最初のコメントを投稿しよう!