其ノ壱

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「西の都へ行った土産だそうだ」 胡蝶蘭の手に乗せると袋の中でころころと音が鳴る。 「俺は飴はあまり好かんから、もし良かったら…」 鈴村は優しく微笑んで飴の袋を見つめる胡蝶蘭に、思わず言葉が途切れた。 細く長い指が袋の紐を解き、飴を摘む。 その飴は笑んだ口元へゆっくりと運ばれ、口の中へとしまわれた。 「……美味いか?」 思わず見とれながら訊ねると、胡蝶蘭は頷いた。 「甘いですね」 ゆっくりと味わうように飴を口内で転がす。 「気にいったら持って行け」 鈴村は腰を上げ、布を背負い直した。 胡蝶蘭も立ち上がり、その手にそっと触れる。 そして鈴村の手に飴の袋を返した。 「…気に入らなかったか?」 残念そうな声に、胡蝶蘭は首を振った。 「1つずつですよ、お侍様。お会いする度に1つずつくださいな」 伺うような目で笑う胡蝶蘭に「わかった」と頷き、鈴村は笑った。
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