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「西の都へ行った土産だそうだ」
胡蝶蘭の手に乗せると袋の中でころころと音が鳴る。
「俺は飴はあまり好かんから、もし良かったら…」
鈴村は優しく微笑んで飴の袋を見つめる胡蝶蘭に、思わず言葉が途切れた。
細く長い指が袋の紐を解き、飴を摘む。
その飴は笑んだ口元へゆっくりと運ばれ、口の中へとしまわれた。
「……美味いか?」
思わず見とれながら訊ねると、胡蝶蘭は頷いた。
「甘いですね」
ゆっくりと味わうように飴を口内で転がす。
「気にいったら持って行け」
鈴村は腰を上げ、布を背負い直した。
胡蝶蘭も立ち上がり、その手にそっと触れる。
そして鈴村の手に飴の袋を返した。
「…気に入らなかったか?」
残念そうな声に、胡蝶蘭は首を振った。
「1つずつですよ、お侍様。お会いする度に1つずつくださいな」
伺うような目で笑う胡蝶蘭に「わかった」と頷き、鈴村は笑った。
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