其ノ弐

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「あんまり来てくれないもんだから、女でもできたかと思いましたよ」 にんまりとした笑みに、鈴村は「ふん」と鼻で笑った。 「忙しくて惚れた女に恋文を書く暇も無いわ」 これにはくすりと胡蝶蘭が笑う。 「おや。惚れた女がいらっしゃるので?」 冷やかすような目に、鈴村は少し考えると 「いや、無いな」 と答えた。 「忙しくて女と出会っている暇こそ無いからな」 困ったように言う鈴村に、胡蝶蘭は首を傾げた。 「私と会う時間はあるのにですかい?」 「うむ…うん、まぁ…そうだなぁ……」 そういえばそうだなぁ。と呟きながら腕を組み、首をひねる鈴村に胡蝶蘭はくすくすと笑った。 「まぁ、あれだ。お前に握り飯をやらなければいかんからな」 ふらりと行けばいつもの場所にいつものように座っているから探すのは簡単だ。 問題は客でない立場の場合、どう話しかければ良いのかということ。 握り飯を渡すというのは話しかけるのに丁度いいのだ。
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