其ノ弐

4/13
前へ
/108ページ
次へ
「いつもご馳走様です」 微笑んだ胡蝶蘭に鈴村は首を振った。 「…ところで…」 何か言いにくそうに口を開いた鈴村に、胡蝶蘭は「はい」と首を傾げる。 「……今日はちと化粧が濃くないか?…この間の方がお前らしいが…」 まだ通っている日が短いため解らないが、この間来た時の方が良い化粧具合だった。 男に良い化粧具合だと思うのも理解しかねるが…。 「…そうですか?生憎今日は白粉を切らしてしまいましてね。人のを借りたんですが、やはり自分の物でないと扱いづらいですね」 微かに警戒の色を映した目をして微笑む胡蝶蘭に、鈴村は「しまった」と思った。 もしかしたら触れてはいけない話題だったのかもしれない。 「……ん?」 反省するが、すぐに胡蝶蘭の顔を覗き込む。 「お前その痣はどうした!?」 化粧の下にうっすらと青くなった痣が見える。 「これは……」 素早く覆い隠す仕草に、鈴村は何事かあったことを確信した。
/108ページ

最初のコメントを投稿しよう!

766人が本棚に入れています
本棚に追加