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まだ少し肌寒い季節に一人の男を見かけた。
薄くて汚れた着物を着て道のはじに座っている。
しかしとても美しい男だった。
「……何を見てるんですかい?旦那」
肌の白く、不思議な色の目をした男は首を傾げた。
その美しさに思わず見とれていた侍・鈴村鉄之助はハッと我に返る。
「あたしの顔に何かついていますかね?それとも見ているだけですかい?」
男は立ち上がると鈴村の前に立った。
鈴村より頭一つ分小さい。
「いや…」
寒そうだな、と丈の短いその着物を見ると、男は笑った。
「あたしと遊びますかい?そう安くはないですがね、損はさせませんよ」
「なっ!!!」
鈴村は驚いて一歩下がった。
男娼がいることは知っていたが、まさかこの男もそうだったとは…
「そんな趣味はない」
鈴村はきっぱり言うと足早に男の横を通り過ぎた。
「そんなことしている暇があったら真っ当な職に就け!!」
すれ違い際にそう言うと男はくすりと笑う。
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