其ノ壱

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まだ少し肌寒い季節に一人の男を見かけた。 薄くて汚れた着物を着て道のはじに座っている。 しかしとても美しい男だった。 「……何を見てるんですかい?旦那」 肌の白く、不思議な色の目をした男は首を傾げた。 その美しさに思わず見とれていた侍・鈴村鉄之助はハッと我に返る。 「あたしの顔に何かついていますかね?それとも見ているだけですかい?」 男は立ち上がると鈴村の前に立った。 鈴村より頭一つ分小さい。 「いや…」 寒そうだな、と丈の短いその着物を見ると、男は笑った。 「あたしと遊びますかい?そう安くはないですがね、損はさせませんよ」 「なっ!!!」 鈴村は驚いて一歩下がった。 男娼がいることは知っていたが、まさかこの男もそうだったとは… 「そんな趣味はない」 鈴村はきっぱり言うと足早に男の横を通り過ぎた。 「そんなことしている暇があったら真っ当な職に就け!!」 すれ違い際にそう言うと男はくすりと笑う。
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