其ノ弐

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「…特にどうしたと言うわけではありません。」 胡蝶蘭は隠したことを後悔し、溜め息をついた。 嘘は見破られる。 「夜毎客の相手をしていますとね、色んな客がいましてね。たまに拳を振り上げる客もいらっしゃるんですよ」 正直に、だが何でもない事のように笑う。 その笑顔に鈴村は片眉を上げた。 「化粧で隠してるのか」 「……はい。だから見破られるとちょっとばかし困るんで……」 不意に傷が熱を感じる。気付けば痣に触れられていた。 「…お侍様…?」 「…痛くないのか?こんなに大きな痣…」 哀れむかのような目をして、優しく優しく痣を撫でる男に、胡蝶蘭は目を伏せた。 「…何ともありませんよ」 やりにくい。 この男はやりにくい。 優しすぎる…… 「……胡蝶蘭?」 「………。」 自分の手のひらに頬を擦り寄せ、何か物言いたそうにする胡蝶蘭に、鈴村はもう片方の手で頭を撫でた。 辛いだろうに…。 そう思うといたたまれない。
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