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「真っ当な、職?…人殺しがですかい?」
その言葉に鈴村はぴたりと立ち止まる。
振り返ると、男の華奢な背中が震えている。
笑っているのだ。
「何がおかしい。」
ムッとして訊ねると男はくるりと鈴村を振り返る。
「見るところによるとお侍様のようですが、人を斬ることが真っ当な職だと言うなんて。世も末ですね」
不思議な目の色が近づいてくる。
息がかかるくらいの距離に男はいた。
「見てくださいよ、お侍様。あたしの目を」
男の目は青く、空の色をしている。
この国では見かけない、異国の色だ。
「珍しい色でしょう?みんなこの目を嫌ってあたしを追い払うんですよ。おかげさまで男娼しかできないんでさ」
男は鈴村から離れて笑う。
爬虫類にも似た感情のない冷たい目。
絶望を知り、人の世の闇を知り、己の行き着く先を全て見通すような、そんな目をしている。
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