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「え?あ、ああ」
周りに目を奪われていた鈴村は慌てて頷く。
すると少女が困ったような顔をして振り向いた。
「……戯れに胡蝶蘭さんを指名しない方がよろしいかと…あの、胡蝶蘭さんは華なので……」
「はな?」
鈴村が首を傾げると、少女が階段を手で示した。階段を上がるのだろう。少女の後をついて行くと、上の階は下の階よりも煌びやかで華やかだった。
その一番奥の部屋へ少女は向かう。
この階の様子からしておそらくあの男、胡蝶蘭はこの宿では地位が高いのだろう。
「こちらです。…失礼します!お客様をお連れいたしました!」
少女が襖の前に正座し、中へ声をかけた。
少しして
「どうぞ」
と声がする。
あの男の声だ。
少女は襖を開け、丁寧にお辞儀した。
中へ入ると、少女も中へ入り、襖を閉める。
「胡蝶蘭でございます。どうぞお見知りおきを」
挨拶をし、目を細めて微笑む。
それから少女に下がるよう指示した。
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